今回はちょっと大仰に「デモドリ的43論」
ゴタクというかチラシの裏なので、苦痛だったらスンマセン。
日和見的でも嫌味でもなく、特にある特定の作風とか、他の人の作品を卑下するつもりでも無く、あくまでも43を作る中で自分の腑に落ちたことを文章としておくのが目的です。
最近集中的に43を作っていて、自分が43に魅力を感じる点はどこであるかに気づくことができました。論理ばかりが先行してもダメですが、さりとて論理が邪魔になることは無いので、ここにメモしておきます。10年後の自分は、「こんなこと書いても視力と気力が追いつかないぜ」と思うことでしょう。
まず、ミニチュアは記号の集合として必要最低限の記号がそろえば良い、似顔絵のような物であるという考え方が出来ます。この考え方で43を作ると、完成品をある特定の車種であると認識できますが、それ以上でもそれ以下でもありません。数を集める場合はこの考え方でいいのではないでしょうか。私の作品ではAlfaRomeoSZがこのタイプの完成品です。
しかし、私の場合は「記号の集合たるミニチュア」を集めるという考え方より、作っていくもの一つ一つに「ミニチュアとしての魅力」を持たせる方に興味があります。
はたして、私が「ミニチュアとしての魅力」を感じる点は何処にあるのか?それは「自分がミニチュアの世界へ入る」、言い換えると「自分が小さくなりミニチュアの側へ立っているような錯覚を覚える」ことが可能な点、さらに、「ミニチュアの世界から出てきた時の現実のスケールとのギャップ」が大きければ大きいほど、魅力を多く感じているようです。
たとえば細かい部品と爪楊枝を比べて、部品だけでは実際のサイズが分からないものを、現実的な縮尺の世界へ引きずり出す行為は、「ミニチュアの世界から出る」と「出てきた時のギャップ」を爪楊枝という共通認識によって効果的に演出する手法だと思います。
また作品を見る人を「入り」易くするために、同スケールの車以外の小物を配置する行為もこの考え方で受けとめると納得がいくのです。(早川氏のヘルメットや手袋、カバンなどはこれに該当しているのではないかと考えています。)(ジョー高安氏のピットサインボードも同様。)
43は宿命的にクリアーコートと研ぎ出しなど、塗膜が厚くなるという大きなハンデを抱えています。そのため「入る」とは言っても限界があり、1/18程度までのスケール感が演出できれば自分としては成功の部類だと思っています。
自分が実際にミニチュアを制作して行く過程では、「入る」ために障壁となる部分、言い換えると「ああ、これは43だな」と分かってしまう部分を残さないことを目標としています。
1/6や1/18の場合は実車と同じ部品構成に限りなく近づけることができますが、43はサイズ的にハンデがあります。しかし、このハンデが43の作品作りの妙だと思います。
まとめると、43としての魅力を持たせるには、43をより大きなスケールのモデルと誤認識するようなディテールをモデル全体に満遍なく盛り込むことが必要だと考えます。
さてゴタクの実例のつもりも無いけど、ついでにピンセットの限界を試してみるテスト。
前回のウィンドウスクリーン基部では0.5mmのドリル歯を使いましたが、今回は0.3mmのドリル歯を使って0.2アルミ板を打ち抜きリベット頭を量産して貼りつけました。
左は新造パーツ、右はエッチングのままの状態。実はこの細かいディテールは今回のゴタクとは関係無い過剰なディテールです。おそらく右のパーツを使っても同じ効果が得られます。
このパーツがどのようにスケール効果を出すかは、以下の写真で確認できると思います。
※残念ながらフェンダーの厚みと銀粒子の粒の大きさが若干「入る」障害になっています。
このスケール効果は別の部分でも「入る」ことを阻害しないディテールが存在することにより、相乗効果を発揮します。相乗効果というよりはハーモニーという表現の方が近いかもしれません。見せ場として一個の部品を細密に作るだけでは、この状態には到達出来ないため、ボディワークからタイヤホイール、フィッティングパーツまで、全てのパーツに神経を配る必要があります。
例えばオーケストラで、ある楽器だけが違う譜面で演奏すれば、そのオーケストラ全体の演奏は、おかしなものになってしまうでしょう。それと同じことが各パーツの状態にも当てはまると考えます。
スケール効果のハーモニーとしてのサイドスリット開口部の薄さ。デカールも併せて「入る」ための重要なディテールです。
モデルが持つディテール全てにおいて、「入れる」均質なスケール感を演出できれば理想的、とはいえ、そうやすやすとは達成できません。だから私は43を作り続けているのでしょう。しかしながら、常にこの均質な状態を目指すと完成しなくなりますので、妥協できるスルー力(リョク)を磨かねば楽しい43ライフは築けないなと思っています。
おはり
ごくろさん 43衰退をリアルに感じることができてよかったです。